仲介手数料を無料にできるのはなぜ?
郵便受けに入ってくる不動産のチラシには、販売している不動産のチラシだけでなく、「あなたのマンションを探している人がいます」「お住まいのマンション売ってください」といったチラシも多く見かけますよね。その際、「仲介手数料を半額にします」であったり、中には「仲介手数料無料!」なんていうものまであると思います。
確かに、不動産取引の素人である一般人が自宅マンションを売りに出したい時、不動産会社に仲介をお願いせざるを得ないわけですが、支払わなければならない仲介手数料は安いに越したことはない。。。けど、なぜ?なぜ安くできるのか?何か業務を省かれてしまうのかな?なんて、ちょっと不安になりますよね。そこで、今回は仲介手数料を安くできる仕組みについて考えてみます。
そもそも仲介手数料とは?
仲介手数料とは、不動産会社が行う仲介業務に対して支払うものです。
一般的な仲介業務とは、以下のようなものです。
1.物件価格の査定と、売り出し価格決定の支援
2.販売活動(物件調査、広告宣伝、指定流通機構への登録、購入希望者の探索)
3.売買価格やその他の条件について、購入希望者と調整・交渉を行う
4.買い主への物件説明(重要事項説明)
5.売買契約の締結(売買契約書の作成と手続など)
6.物件の引き渡し(現地立ち合いによる確認、引き渡し手続き)
7.代金・費用の決済
8.その他、不動産取引に関する相談全般
そして仲介手数料は、売買契約が成立して初めて支払う義務が発生する全くの成功報酬です。
また、仲介手数料には上限があります。
「(売却金額×3%+6万円)×1.08(消費税)」※簡易計算式
これを上限に、媒介契約時に不動産会社側が仲介手数料を提示してきますが、一般的には上限の金額になるでしょう。
例えば、あなたの中古マンションが3000万で売れたとします。すると、仲介の不動産会社には1,036,800円支払うことになります。
※仲介手数料について詳しくは→「不動産会社に支払う仲介手数料」
買い主に対して、仲介手数料を無料に出来る仕組みを考えてみよう
<ケース1> 売却の仲介を依頼された不動産会社が買い主も探せた場合は、売り主からの仲介手数料を元手に、買い主からの仲介手数料を減額もしくは無料にする。
→中古マンションを売却する際、一般的に、売り主の仲介不動産会社と、買い主の仲介不動産会社は別の会社のことが多いです。しかし、売却を依頼された不動産会社が、条件のあう買い主を探して両方の仲介を担当することはおかしいことではありません。その場合、売り主と買い主の両方から仲介手数料をもらうことができるのですが、例えば、売却を依頼された中古マンションを売りに出したものの、なかなか反応がない場合などに、買い主の購買意欲を高めるために、買い主側の仲介手数料を減額してでも買い主を探す手段とすることがあります。
そもそも!仲介業務って、確かにいろいろすることはありますが、売り主・買い主の両方から満額をもらうのは、もらいすぎ?
<ケース2> 個人からの買取物件で、業者がリフォームして販売している中古マンションの場合
→個人がマンションを売却する場合に、業者に買い取ってもらうという方法があります。
買取の場合は、一般消費者に売却するより安くなるケースがほとんどです。業者は買い取ったあと、リフォームをして売り出すことを前提にしているので、そのコストや利益などを差し引いて買い取るからです。
なので、リフォーム後の売却価格には、仲介手数料を差し引いても十分な利益が乗っているのでしょう。
売り主に対して、仲介手数料を無料に出来る仕組みを考えてみよう
<ケース3> 売主が個人で買主が業者の場合、つまり買取では仲介手数料は不要
→上記にもありますが、中古マンションを個人に売るのではなく、業者に売るという方法があります。これが買取です。仲介を依頼した不動産会社が買取を行っている場合も少なくないでしょう。買取は仲介業務ではないので、仲介手数料は必要ありません。
しかし買取の場合、個人に売るより売買価格が下がります。一般的に買い取った後、リフォームなどを行った上で販売することが多いので、その分のコストや不動産会社の利益分を差し引かれるので安くなってしまいます。
ただし、売却を急いでいる場合などは、不動産会社との条件が折り合えばすぐに売却できるので、売り主の状況に合わせて買取の選択もあり得るでしょう。
<ケース4> あなたのマンションに売却物件が出るのを待っている買い主がいる。
→まれなケースではありますが、「新築販売時に非常に人気の高かったマンションである」とか、「進学で人気のある学校の側」であるとかで、あなたのマンションに売却物件がでるのを待っている買い主がいた場合は、買い主側からの仲介手数料を元手に、売り主の仲介手数料を減額するケースです。
<ケース5> 企業努力?業務の効率化
→仲介業務の中には、法律上(宅地建物取引業法)省けない業務と、省ける業務があります。
上記の一般的な仲介業務の中で業務の効率化が図れるのは、2の「販売活動(物件調査、広告宣伝、指定流通機構への登録、購入希望者の探索)」と8の「その他、不動産取引に関する相談全般」くらいです。
現在、仲介手数料を減額している不動産会社が行っているのは、まず広告費の削減です。これは、例えば近隣マンションへのチラシの配布や新聞折り込み広告などを行わないことで、チラシの作成費用や配布の人件費などの経費をカットすることです。
これら広告宣伝活動をインターネット広告に特化することで仲介手数料の減額につなげています。
また、オープンハウスの実施や電話での紹介なども行わないなど、主に人件費・経費のコストカットを仲介手数料の減額につなげています。
これを企業努力と見るのかは考え方次第ですが、インターネットに物件情報を載せただけで売れるでしょうか?このような条件で媒介契約を結んだあとに、なかなか売れないから近隣にチラシを配布してもらうとなれば追加の費用がかかるでしょう。場合によっては仲介手数料の減額分よりかかってしまうかもしれません。
→ケース1のように、売却の依頼を受けた不動産会社が買い主も探せたならば、売り主・買い主の両方から仲介手数料を受け取ることができます。この場合、双方の仲介手数料を半額ずつにすることがあります。これは、企業努力と言ってよいのではないでしょうか。
もちろん短期間で売買できなければ経費がかかってしまうので、仲介手数料を決定する媒介契約時に半額を約束するのはよほどの優良物件か、なにかしらの条件付きになるでしょう。
仲介手数料を減額(もしくは無料)にするには、必ず理由がある
不動産会社からしてみると仲介手数料はマンション売却が成立しないと入ってこないのです。
なので、仲介手数料を減額するのには必ず理由があります。
支払うお金が少ないに越したことはありませんが、ケース3や4のように納得できる理由なのか、ケース5のように返って支払うお金が多くなる恐れはないのか、必ず理由を確認しましょう。
仲介手数料無料の注意点
■両手仲介の注意点
上記にもたびたび書いた通り、売却を依頼された不動産会社が買い主も探せたような、1社の不動産会社が売り主も買い主も仲介することを「両手仲介」と言います。
このこと自体はおかしいことではなくて、タイミングよく同じ不動産会社にあなたの物件を希望する買い主が現れれば、何ら問題はありません。
しかし、不動産会社からすると、売り手からの仲介手数料と買い手からの仲介手数料の両方が入ることになり、大変魅力的です。
よって、何としても自社で買い主を探そうとして、他社が購入希望者を連れてきても紹介しない「囲い込み」を行うかもしれません。
通常、中古マンションの売却を依頼すると「レインズ」に登録され(専任媒介、専任専属媒介の場合は必須)、別の不動産会社の依頼主があなたの物件に興味をもって内覧に訪れます。そのようにしてたくさんの内覧があって、売却は進むもの。あまりに内覧が少なかったり、インターネット情報の広告が広く掲載されていなかったりする場合は、あなたが依頼した仲介不動産会社が両手仲介を狙って販路を狭めていたり、内覧を断っていたりするかもしれません。
これでは、仲介手数料の減額以前に、販売チャンスの損失です。
マンションを早く・高く売るためには、適切な仲介手数料を支払い、「囲い込み」などさせないよう、仲介不動産会社とコミュニケーションをとりましょう。
■インターネット広告だけでは売れない・・・事例
これまで、人気のあるエリアであったり、駅が近いといった物件はそれほど苦労することなく売れるのではないかと思っていましたが、コラムニストの木村和久さんが日刊SPA!にご自分の中古マンションを売却した経験を投稿されており、それを読んでいかに優良物件(この場合は代官山という人気エリア)であっても、お付き合いする不動産会社をきちんと選ばないと「早く高く」は売れないのだという思いを強くしました。
詳しくは以下のサイトを読んでいただければと思いますが、要約すると、
・物件は代官山の1DKの事務所
・まずはチラシ(「投資用マンション探しています」)の入っていた有名大手不動産会社と「専任媒介契約」を結んだが、販売開始2~3日に数名が見に来ただけ。
・一般媒介契約に切り替えて、やはり超有名大手不動産会社5社と契約したが、どこもインターネット広告を出すだけで営業活動をしない。
・値段も下げたが、もっと下がるのではないかと思われたか、全く動きがないまま3か月目に入る。
・新宿の中堅不動産会社(有名ではない)の営業マンから「この物件は妥当な価格で絶対に売れるから、売らせてほしい」との申し出あり。ネットで「優良なのに売れない物件」を探して営業をかけていたらしい。
・さっそくオープンハウスを実施。代官山などの人気エリアは近くに住んでいる人が買いたがる。このエリアにこだわりがあるから。なので、付近の古い物件や狭い間取りの住宅にチラシを配布しまくった。
・オープンハウスは盛況なものの、契約にはなかなか至らず。しかし、結局はオープンハウス2日目の終わりかけに来たお客さんと契約成立。
いかに「有名」「大手」の不動産会社であっても、インターネット広告を出すだけではだめで、物件に合った販売戦略・活動を行わないと、人気エリアの物件でもなかなか売れないという事例でした。
※「買うより難しい、中古マンション「売り」事情」https://nikkan-spa.jp/806967
※「ネット頼りでは売れない中古マンション・・・デキる営業マンの次の一手」https://nikkan-spa.jp/806994