物件状況等報告書(区分所有建物用の例)について
物件状況等報告書とは
売買物件が売買契約締結時にどのような状態なのか、そのような状態で買い主に引き渡すかを明確にする文書です。
記載内容については、買い主だけではなく、購入希望者に参考情報として提供される場合もあります。
なぜ必要なのか、なぜ重要なのか
中古物件の場合、経年変化などにより物件に損耗等が生じていることが一般的ですが、その状態を買い主に説明し、買い主もそれを了解した上で取引するために物件状況等報告書と設備表を使用します。
これは、後々のトラブルを避けるためです。
売却物件に瑕疵(欠陥や不具合のこと)がある場合、この物件状況等報告書にて、買い主にあらかじめ説明することが必要です。
万が一売り主が知っていたにも関わらず買い主に知らせなかった瑕疵については、不動産売買契約書の定めに関わらず、売り主に対し損害賠償義務が生じます。これはたとえ売買契約書に瑕疵担保責任を負わない旨の取り決め(特約)があった場合でも生じます。
一方で、買い主が売買契約締結時に瑕疵の存在を知っていた時には、売り主は責任を負う必要はないので、売り主は知っている瑕疵についてはできるだけ正確に買い主に知らせておくことが、トラブルを避けるために非常に重要です。
瑕疵には、物件に関する物理的瑕疵だけでなく、心理的瑕疵(事件・事故・自殺など)もあります。また、物件に何らかの影響を及ぼすおそれのある建築計画や、騒音・振動・臭気などの発生、暴力団事務所等が物件の近隣周辺にあるか否かも購入の際の判断基準となることがあります。これら「重要な事実」についても、トラブル防止や売り主の説明義務違反に問われないようにするため、知っている事実はできるだけ明確にしましょう。
中古マンション(区分所有建物)用の「物件状況等報告書」記入項目一覧
物件状況等報告書は、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方について」(ガイドライン)を参考に、一般社団法人不動産流通経営協会(FRK)が作成した標準書式に則った文書になっている場合が多いです。ここでは、中古マンション(区分所有建物)用の記入項目の例を挙げます。一例ですので、詳細は、この書類を作成するタイミング(大体は媒介契約時に作成)で、仲介を依頼する不動産会社と相談の上、作成してください。
1.売買物件の状況
・雨漏りの有無(場所や修理した年月など)→外壁やサッシ取り付け部分などからの吹込みやシミがある場合なども記入する
・シロアリ害の有無(予防工事の有無や年月、駆除・修理の年月など)
・給排水管故障の有無(箇所・状況)→配管等の割れ・水漏れ、赤サビ水・濁り・詰まり等、給排水関係の不具合を記入
・腐食の有無(箇所・状況)→特に浴室・洗面所・台所など水廻りを中心に、サビ(ベランダの鉄製部分など)も含め、使用に支障をきたすかどうかなど程度を記入
・改築の有無(箇所・年月・業者名など)→壁や柱の撤去・移動のある増改築・間取り変更を行っている場合は、構造耐力に影響を及ぼす可能性があるので、特に留意して記入
・火災等の被害の有無(箇所・年月・状況など)→ボヤがあった場合も記載
・漏水等の被害の有無(箇所・年月・状況など)
・土壌汚染に関する情報の有無(状況など)→土壌汚染とは、鉛・砒素・水銀・カドミウム等の有害物質や油や薬品類などが土壌に含まれることに起因して、人の健康に被害を与える土壌の状態のことを言います。売買物件または周辺の土地が、過去および現在において有害物質の製造または使用等を行う工場・事業場等の敷地として利用されていた場合、土壌汚染の可能性がありますのでの記入してください。
・浸水等の被害の有無(年月・程度など)→床上・床下に関わらず、浸水した事実があれば記入。周辺が浸水しやすい環境であれば、その旨も記入
・近隣の建築計画の有無(概要)→売買物件に影響を及ぼすを思われる近隣の建築計画があれば記入
・騒音・振動・臭気等の有無(状況)→道路・電車・飛行機・工場・店舗等によるものが考えられますが、一般的に気になると思われるものについて記入
・電波障害の有無(程度)→テレビ等の電波に障害がある場合に記入
・周辺環境に影響を及ぼすと思われる施設等があるか→ごみ集積場所、暴力団事務所、火葬場などが考えられますが、一般的に気になると思われるものについて記入
・近隣との申し合わせ事項など→自治会、町内会等での協定や取り決め(ごみ集積場所、自治会・町内会費等)で、特に買い主に引き継ぐべき事項を記入
・その他→上記項目の補足説明や上記項目以外(売買物件やその近隣での自殺、殺傷事件等の心理的影響があると思われる事実、近隣とのトラブル、擁壁・崖地・法地、吹き付けアスベストなど)で買い主に説明すべき事項があれば記入
2.管理費・修繕積立金等の変更予定および大規模修繕の予定等
・管理費・修繕積立金等の変更の予定の有無(いつ)
・自治会費等の有無(金額)
・大規模修繕の予定の有無(いつ、臨時負担金の予定など)
・管理組合集会での討議事項など
3.売買物件に関する資料等
・新築時の設計図書等の資料の有無と引き渡しをするかしないか
・新築時の分譲業者名・施工業者名
・売買物件取得時に関わった不動産流通業者名
・専有部分の修繕の履歴に関する資料の有無と引き渡しをするかしないか
・建物の石綿の使用の有無の調査に関する資料の有無と引き渡しをするかしないか
・建物の耐震診断結果の資料の有無と引き渡しをするかしないか
・住宅性能評価等に関する資料の有無と引き渡しをするかしないか
・前所有者から引き継いだ資料の有無と引き渡しをするかしないか
上記以外にも買い主に引き渡した方がよいと思われる資料や情報があれば、その他の欄に記載しましょう。
物件状況等報告書を作成するうえでの注意点
冒頭にも記載しましたが、売却後にトラブルにならないようにするためには、例え売り主によって不都合に思える瑕疵(欠陥・不具合)であったとしても、物件の状態を正しく伝えることが重要です。
正しく伝えており、買い主がそれを承知の上で買ったのであれば、後々何かあったとしても賠償を負う必要はないのです。
マンションを売却するためには、瑕疵がない方が売りやすいには違いありませんが、売却後のトラブルは売ることのストレスよりも大きなストレスを生む場合がありますので、物件状況報告書には、包み隠さず、漏れなく記載するようにしましょう。