媒介契約書のチェックポイント
中古マンションを売却するには、「宅地建物取引業法」に則った取引を行わなければなりません。よって、通常は不動産会社に仲介業務をお願いすることになりますが、その際、締結するのが「媒介契約」です。
仲介を請け負う不動産会社には、媒介契約を締結する義務があり(宅地建物取引業法第34条の2)、 契約書を交わすことで、不動産会社が行う仲介業務の内容やそれに伴う対価(仲介手数料)などを明確化し、トラブルの発生を防ぎます。
媒介契約については、消費者保護を目的として国土交通省から「標準媒介契約約款」が告示されています(こちら)。
媒介契約書については、この標準約款を元にして契約が締結される(国土交通省からの指導)ので、約款の内容や確認事項を事前に理解してから契約を結びましょう。
以下に、標準約款をベースにした媒介契約書の記載事項と、それぞれのチェックポイントの一例をご紹介します。
(1)標準約款か否かの区別
- 標準約款を使用しているかどうか。標準約款でない場合、その理由は何か
- 標準約款でない場合、標準約款と照らし合わせて、漏れなどないか。記載事項に不明点はないか。
国土交通省は、不動産会社に対して標準約款をもとに媒介契約を締結するよう指導しています。
また、標準約款に記載されていないが、売り主が希望する条件があれば、追記することで極力明確にしましょう。国土交通省も、依頼者にとって不利にならない事項をより具体的に標準約款に追記することを推奨しています。
(2)媒介契約の種類
- 媒介契約の種類(「専属専任」「専任」「一般(明示型・非明示型)」のいずれか)の記載と、自分の希望する契約種類になっているか。
(3)物件の確認
- 売却物件が正確に記載されているか。
(4)不動産会社の義務と業務
- 不動産会社が提供する業務内容(販売活動・報告方法・その他)や、法的な義務について明記されているか。
追記すべき事項があったり、業務の内容をより明確化したい場合、不動産会社に依頼し調整しましょう。
(5)有効期間と更新について
- 有効期間の記載があるか。
- 3か月を超えていないか。
- 契約の更新が自動になっていないか。
契約期間については、
専属専任および専任媒介契約の場合は、法規制により3か月を超える契約はできません。一般媒介契約の場合は、法規制はないものの、標準約款では3か月を超えない範囲で決定することとしています。想定する売却スケジュールなどを踏まえて有効期間を決定します(3か月より短い期間での契約も可能)。
契約の更新については、
媒介契約の更新は、有効期間満了時に「依頼者からの申し出」によって更新されるものであり、自動更新されるものではありません。更新については、依頼者が自らの判断で、熟考の上で、決定してください。
更新後の有効期間も3か月を超えない範囲で決定してください。
(6)指定流通機構への登録
専属専任・専任媒介契約を締結した場合は、指定流通機構へ物件情報を登録することが必須です。
一般媒介契約の場合、登録は任意のため、登録の有無を確認してください。指定流通機構を活用した販売活動を希望する場合には、契約書にその旨を記載するよう依頼しましょう。
(7)媒介価額
- 媒介価額が正確かどうか
売り主の希望価格と不動産会社の査定価額を踏まえて決定した売り出し価格であることを確認しましょう。
(8)仲介手数料
- 仲介手数料の金額と、支払時期が正確に記載されているか。
- その他の手数料の記載や不明点がないか。
仲介手数料についてのトラブルは多いので、媒介契約締結の前に、不動産会社と十分に確認してください。
(9)依頼者の義務について
標準約款では、依頼者と不動産会社がお互いに誠実な取引を行うために、依頼者の義務についても定められており、 依頼者に以下の義務違反があった場合、不動産会社は媒介契約に基づいて、仲介手数料相当額を上限として費用等を依頼者に請求することができるとなっているので、再度確認しましょう。
【専属専任媒介契約の場合の依頼者の義務】
・媒介契約の有効期間中に、他の不動産会社に仲介を依頼することはできない。
・また、自分で探してきた購入希望者との直接契約も不可。
【専任媒介契約を締結した場合の依頼者の義務】
・媒介契約の有効期間中に、他の不動産会社に仲介を依頼することはできない。
・自分で探してきた購入希望者と契約することは可能だが、その旨を不動産会社に通知する義務がある。(不動産会社が、依頼主が直接売買契約をした事実を知らずに仲介業務を続けてしまうことを避けるため)
【一般媒介契約(非明示型)を締結した場合の依頼者の義務】
・売買契約が成立した場合、その事実を知らずに他の不動産会社が仲介業務を継続してしまうことを避けるために、その旨を依頼したすべての不動産会社に通知しなければならない。
【全ての媒介契約に共通】
・媒介契約の終了後2年間は、媒介契約の有効期間中に不動産会社から紹介を受けた購入希望者と、その不動産会社を通さずに売買契約を締結する(直接取引)することは禁止。
(不動産会社への仲介手数料の支払いを避けるために、意図的に媒介契約を終了させてから、不動産会社から紹介を受けた購入希望者と契約するような「不誠実な」行為を防ぐため)
(10)媒介契約の解除
- 媒介契約の解除の条件について確認
【依頼者もしくは不動産会社のいずれかから解除できる場合 】
・依頼者または不動産会社の一方が、媒介契約に定められた義務を履行しない場合で、義務の履行を相当の期間を定めて催告したにもかかわらず、相手方が履行しないときは、もう一方より媒介契約を解除することができる。
→つまり、媒介契約に対して「約束違反」があった場合、一定の期間内に約束を果たすよう要求し、それでも相手方が実行しない場合には、媒介契約を解除できる。
【依頼者が解除できる場合】
・不動産会社が、媒介契約に定められた業務を誠実に遂行しない場合
・不動産会社が、媒介契約に関する重要な事項について、故意または重過失により事実を告げない、あるいは、不実(虚偽)のことを告げた場合
・不動産会社が、宅地建物取引業に関して不正、または著しく不当な行為を行った場合(他の依頼者の仲介業務で不正があったような場合を含む)
(11)反社会勢力の排除
- 不動産会社との媒介契約書の条項の中に「媒介依頼者及び不動産会社(宅地取引扱い業者)が、暴力団等反社会的勢力ではないこと」などを確約する条項が盛り込まれているか
不動産取引からの「反社会的勢力の排除」を目的に、平成23年6月以降、順次、反社会的勢力排除のための標準モデル条項が導入されており、相手方がこれらに反する行為をした場合は、契約の解除が可能です。