マンション売却における売買契約書の内容

売買契約書の一般的な内容と確認ポイントについては、以下の通りです。

1.売買物件の表示
・一般的には登記記録(登記簿)に基づいて契約書に記載されます。
→売却物件の表示に誤りがないか

2.売買代金、手付金等の額、支払日
・売買代金や手付金等の金額と買い主の支払日が記載されます。
・手付金の種類(解約手付、証約手付、違約手付)も記載されます。
→売買代金に誤りはないか。支払日はいつか。
→手付金の金額は妥当か(売買代金の何割程度か)。
→手付が解約手付の場合、いつまで手付解除が可能であるかも確認。

3.所有権の移転と引き渡し
・所有権の移転と引き渡しの時期について記載されます。 所有権移転と引き渡しは、代金の支払いと引き換えに行われますが、不動産取引の実務では、代金支払いの場で、所有権移転登記に必要な書類や鍵など買い主に引き渡されることで完了することが多いようです。
→引っ越しなどの予定を踏まえて問題ないか(確実に引き渡しができるか)。

4.付帯設備等の引継ぎ
・中古マンションの売却においては、室内の照明やエアコンなどの設備などの引継ぎについて明確にしておく必要があります。このような付帯設備等の引継ぎをめぐるトラブルもありますので、契約前に、何を引継ぎ、何を撤去するかを買い主との間で十分に調整しておきましょう。
・また、引き継ぐ設備等が故障していないかなど、その状態も事前に確認しましょう。
・契約にあたっては、付帯設備の一覧表を作成して、一つ一つ確認することが多いようです。
→引き継ぐべき付帯設備等は明確か。

5.負担の削除
・抵当権や賃借権など、所有権を阻害する権利は、売り主側によって抹消された状態で引き渡さなければなりません(なお、投資用物件の売買では、テナントとの賃貸借契約に限って、買い主に引き継ぎます。この場合は、引き継ぐ権利と引き継がない権利を明確にする必要があります)。
→売却物件を完全な所有権で引き渡しができるか(抵当権や貸借権などを確実に整理できるか)。
→貸借権など引き継ぐ権利がある場合は、その内容は明確かを確認。

6.公租公課等の精算
・固定資産税や都市計画税といった公租公課については、売り主と買い主の間で精算することが一般的です。 その他、管理費などの費用を精算することもあります。
・精算は引き渡しの日を基準に、日割りで計算されることが多いようです。
→精算の対象および精算金額・精算方法の確認

7.手付解除
・契約を解除せざるを得ない場合に、手付解除することがありますので、そのような取り決めになっているが確認します。 当事者間の合意で、手付解除を認めない契約としたり、手付解除が可能な期間を限定することも可能です。
・手付金額は一般的に売買代金の20%までの範囲で設定することが多いようです。手付金が少額の場合、自分から解除する場合の負担は小さくなるが、相手から解除されるリスクも高くなります。逆に手付金が多額である場合は、その逆になります。
→手付解除は可能か。また、いつまで手付解除が可能か。
→手付金が適切な金額か確認。

8.引き渡し前の物件の滅失・毀損(危険負担)
・売買契約締結後に、天災で建物が全壊するなど、売り主にも買い主にも責任のない理由によって、売却物件が滅失・毀損した場合の取り決めです。
・一般的には売り主が修復したうえで引き渡すことになりますが、過大な費用が掛かるときや買い主が契約の目的を達せられないとき(たとえば、とても住む状態には修復されないなど)は、契約を無条件で解除することができる、万が一の場合の取り決めです。
→契約締結後、引き渡し前に物件が天災等により滅失、毀損した場合の取り扱いは明確か。

9.契約違反による解除
・契約違反(法的には「債務不履行」という)により、契約を解除するときの取り決めです。
・売り主または買い主のいずれかが債務不履行となった場合は、その相手方は契約を解除できます。 この場合、一般的に契約に違反した側が違約金等を支払います。違約金は概ね売買代金の20%までの範囲で設定されることが多いようです。
→違約金や損害賠償の予約額は適切か。

10.反社会的勢力からの排除
・不動産取引からの「反社会的勢力の排除」を目的に、平成23年6月以降、順次、反社会的勢力排除のための標準モデル条項が導入されています。
・売買契約書の条項の中に「売り主及び買い主が、暴力団等反社会的勢力ではないこと」「物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供しないこと」などを確約する条項がもりこまれていることを確認しましょう。 相手方がこれらに反する行為をした場合は、契約を解除することができます。
→「売り主及び買い主が、暴力団等反社会的勢力ではないこと」「物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供しないこと」等の記載があるか。

11.ローン特約
・買い主に責任がないにもかかわらず、住宅ローンの借り入れができなかった場合、買い主は売買代金を支払うことができなかった場合に備え、一般的には売買契約にはローン特約を付すことが多いです。
・買い主は、住宅ローンの審査に落ちて、代金を支払えなくなった場合は、無条件で契約解除することができます。 ただし、買い主に過失があって住宅ローンを組むことができなかった場合(ローン審査に必要な手続きを怠るなど)は、 この特約は適用されません。 (売り主は、買い主の信用力にも留意して契約することが必要です。 )
→買い主に住宅ローンの利用予定があり、特約が付されている場合は、買い主の信用力に照らして借り入れ内容(金額など)に無理はないか(無理な借り入れ内容の場合は、解除のリスクが高まる)。

12.瑕疵担保責任
・売買物件に、「隠れた瑕疵(欠陥など)」が発覚した場合、売り主は物件の修補や損害賠償の義務を負います。 瑕疵が重大で済むこともままならない場合などは、契約を解除されることもあります。
・売買契約では、売り主が瑕疵担保責任を負うか否か、負う場合は、物件の引き渡しからどのくらいの期間で責任を負うかなどが取り決められます。
・瑕疵担保期間が短いと買い主に不利、長いと売り主に不利などとなりますし、隠れた瑕疵をめぐるトラブルは非常に多いことから、必ず契約内容を確認しましょう。
→瑕疵担保責任の期間は明確か

13.契約全体について
→自分の希望条件は記載されているか
→自分にとって無理のある条件はないか
→不明確な条件はないか
→消費者契約に該当するか(該当する場合は消費者に不利な契約は無効)
→その他、特に定めておく事項はないか

※一般財団法人不動産適性取引推進機構が作成した
標準売買契約書の例
付帯設備一覧表の資料

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